野菜は体に良いとは言うけど、コスパ的には何をどのくらい食べればいいの?

 野菜は体に良い。耳にタコができるほど聞くセリフですが、昨今では野菜の値段も上がっております。さて、お高い野菜を食べるメリットはあるのか? 解説してまいりましょう。

結論

  • 野菜は体に良い。
  • 400gくらいまでは食べれば食べるほど良いけど、それ以上はコスパが悪くなる。1日3食2品くらい野菜を食べることを目指す。
  • 冷凍野菜とスムージーは生の野菜と同程度に健康に良い。
  • ピューレと野菜ジュースと青汁は必ずしも野菜の代わりにはならない。

野菜と果物は1日400g程度を目指すべきでそれ以上はコスパが良くない

 野菜は健康に良い。そんなイメージがありますが、果たして本当にそうなのでしょうか? 思わせぶりに書きましたが、結論から言うと「おおむね健康に良い」です。もうそういうイメージですよね。私も「健康に良さそう」というイメージだけで、本ブログのトップページの画像パプリカにしてます。

 野菜や果物をたくさん食べると健康に良いのかを調べた大規模な研究があります。野菜を1単位(小皿に1つ程度)多く食べると、死亡率が5%下がるとされています。心血管疾患による死亡リスクについても、有意な逆相関(野菜や果物を食べるほど心血管疾患を起こす確率は下がる)が見られています。シンプルに、野菜を食べるのは体に良いという理解で良いでしょう。

 一方で、たくさん食べている人がより多く食べることはさらなる健康に寄与するのでしょうか? こちらも結論から言うと「400g程度で健康効果は頭打ちになる」です。

 基本的には食べれば食べるほど野菜の健康効果は高まるのですが、ある一定の摂取量にさしかかったあたりでその効果は頭打ちになります。食べれば食べるほど無限に健康になれるわけではないのです。

 ところで我々は普段はどのくらい野菜を食べているのでしょうか。令和5年国民健康栄養調査の結果を見ると、20歳以上の日本人は平均して野菜は256g、果物は93g摂取しています。こうした普通の人はあと100g程度は摂取量を増やすことを目指してもよいでしょう。

 一方で、野菜を普段からしっかり食べている人はいかがでしょう。筆者は野菜が好き(管理栄養士ですから!)なので、時間があるときはかなりしっかり野菜を食べます。

ある日の筆者の献立

  • 朝食:ミネストローネ 食パン 目玉焼き バナナ
  • 昼食:ボロネーゼ ブロッコリーのクタクタ煮
  • 夕食:玄米 さばの味噌煮 沢煮椀 ピーマンとじゃがいものきんぴら きのこのマリネ

 こんな感じでざっと計算したら野菜は355g程度でした。バナナの112gを含めると、合計467gとかなりしっかりと果物、野菜を取っていることがわかります。

 前述の通り、果物・野菜には400g付近に健康効果頭打ちゾーンがありますから、筆者のように野菜好きな方はこれ以上頑張って食べるのはコスパが悪いかもしれません。毎日野菜のg数を量ることはかなり難しいので『毎食果物もしくは野菜を2品食べれば概ね満点、それ以上は無理しなくていい』くらいの感覚が実用的かなあと思います。

量を確保するのが大事。安い野菜でいいからいっぱい食べよう。

 どの野菜を食べればいいか? という質問に対しては「とりあえず量を確保しましょう」とアドバイスさせていただきます。

 キュウリは「世界一栄養のない野菜」としてギネスに認定されていることをご存知でしょうか? そう聞くとなんだかキュウリは駄目で、他の野菜を食べなくてはいけないような気がしてきます。しかし、キュウリは『Least calorific fruit』として、要はエネルギーが低い野菜として登録されているだけです。飽食の時代においては、低エネルギーなのに、食物繊維やカリウムを摂取できるのは、むしろ有利とすら言えます。よく「きゅうりってだめなんでしょ?」「もやしは栄養ないですよね?」などと質問されるのですが、そもそも食物繊維を摂れるのが強烈なメリットなので、遠慮なくきゅうりももやしも食べたら良いと思います。

 もちろんやさいはもやしだけ、みたいな偏った食事はデメリットもあるでしょう。緑黄色野菜は120g食べたほうが良いと健康日本21で定められたりもしています。ただし、前項で述べた通りまずは量です。

 この考え方だと、野菜の量をしっかり確保することこそが重要ということになります。というわけで、可食部の単価をまとめてみました。

スクロールできます
野菜の種類可食部100gあたりの価格
※筆者の近所のスーパー調べ
長ねぎ91円
トマト66円
きゅうり36円
人参30円
キャベツ26円
玉ねぎ24円
緑豆もやし15円

 g単価の安いキャベツや、玉ねぎや、もやしなどは、健康面ではコスパが良いと言えます。みなさんもg単価の安い単価が安い野菜をいっぱい食べましょう! 薬味として使われる大葉などはコスパ的にはお話にならないですが、美味しさのために食べるものと理解して楽しむならばよいでしょう。 

 ……という結論を書くつもりだったんですが、気が変わりました。コレ計算面倒くさすぎる! 

 ChatGPTで集計したら嘘ばっか書くしー! 卸値の資料はあるのですが、小売の実勢価格を反映している資料がうまく見つかりませんでした……。結局本業の私がこの表を作るのに、スーパーでウンウン唸りながら30分くらいかけてます。こんなん普段から計算できるわけ無いだろ! 毎日緻密な計算をすることによって100g単価を10円節約できても、250g*30日=750円/月の節約にしかならないでしょ? いくらなんでもちょっとタイパが悪すぎると感じました。まあもう旬で安い野菜食べればなんでもいいよ!

冷凍野菜とスムージーは健康的で、ピューレと野菜ジュースや青汁はそうでもない

 この野菜の健康効果は、加工された野菜の場合にはどうでしょうか。

 冷凍することによって破壊される栄養は確かにあるのですが、ご紹介した研究では冷凍野菜と普通の野菜の間に大差はなく、冷凍野菜でも十分な健康効果を見込めることがわかっています。

 ご自身でブレンダーを使って作成したスムージーなんかも同様に野菜の健康効果を期待できます。単純に細かく粉砕しただけですからね。ここに砂糖を入れる場合にはまた別の問題が発生しますが、野菜を100%摂取していますので、野菜としては100点の性能です。

 一方で、ピューレ野菜ジュース青汁については本当に健康効果が期待できるかは疑わしいとされています。

 そもそもピューレってなんでしょう。ピューレをgoo辞書で引いてみると以下の通りでした。

《「ピュレ」とも》野菜・果物・肉・魚などを生のまま、またはよく煮てから裏ごしにし、煮詰めたもの。

 要は、食物繊維を濾し取ってしまっているんですね。舌触りが良くなり、食味は向上する調理方法ですが、食物繊維の多くは取り除かれてしまいます。

 野菜ジュースも同じで、不溶性食物繊維の多くを濾し取って製品化しています。市販のジュースを飲んだ時に「ザラザラするな」と思ったことがある方はあまりいらっしゃらないでしょう。

 野菜の健康効果の大きい要素は「食物繊維」だと言われています。それらが除かれた製品が、野菜と同格の健康効果を発揮できるかと言われると、確かに疑わしいと言えます。それでも多少の水溶性食物繊維が残っているはずなので、理屈で考えれば多少の健康効果はありそうです。

 しかし、憶測だけで判断するのは早計です。栄養業界において「ありそう」「確かめてみたら、あった」は天と地ほどの差があります。現状では「ピューレや野菜ジュースも気休め程度にはなるかもしれないが、はっきりとメリットが確立している野菜をしっかり食べた方が良い」と理解しておくのが良いでしょう。

 なお、野菜ジュースに砂糖が入っている場合には「デメリットの大きさがはっきりしている」状況になります。デメリットははっきりしているけれど、メリットははっきりしないもの、それは全くおすすめできないと考えます。

目次

余談 アンケート商法「管理栄養士98%推奨」の闇

 

 皆さん「管理栄養士の98%が推奨」などと書いてある野菜ジュースや製品、みたことがありませんか? あれ、本当にアンケート取られるんですよ。私も10年前くらいにとられたことがあります。

 しかし、その時のアンケートの文言にものすごく違和感を感じたことを覚えています。その内容は

『野菜や栄養が不足している人に「◯◯野菜ジュース」を紹介したいですか?』

 というようなものでした。

 前述の通り、野菜ジュースは砂糖が入っていなければ、飲んで不健康になるような製品ではないのです。この製品にも砂糖は含まれていませんでした。

 でも「管理栄養士の98%が推奨」という書き方だと「野菜と同程度に健康的」に見えますよね。あるいは、他の野菜ジュースよりも特にこの◯◯野菜ジュースが優れていると言っているようにも見えます。なんかこう、ずるいなあと感じたのを覚えています。まあ「商売の一環やろ!」と言われればそうかも知れませんが……。

 とはいえど、へそ曲がりな私はNoと回答しましたので、98%の方には入っておりません。嫌いではありませんが、野菜ジュースは特におすすめする理由はありません!

改めて結論

  • やっぱり野菜は体に良い。
  • 400gくらいまでは食べれば食べるほど良いけど、それ以上はコスパが悪くなる。1日3食2品くらい野菜を食べることを目指す。
  • 冷凍野菜とスムージーは生の野菜と同程度に健康に良い。
  • ピューレと野菜ジュースと青汁は必ずしも野菜の代わりにはならない。おすすめしてない管理栄養士もいます!
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