本日は魚の話です。魚というと、健康志向なイメージが強い魚ですが、いかがなものでしょうか。
1.たんぱく質のことだけ考えれば魚のコスパは鶏肉と比べて悪い
魚も最近高くて困ってしまいますね。水産庁のwebサイトによると、近年は切り身の状態で売られることの多い、サケ、マグロ及びブリが多く消費されているようです。今回はこのあたりの魚を取り上げて論じてみることにします。
まず価格を調べてみます。なかなか小売価格をきちんと反映した公的データがなかったのですが、2024年家計調査の購入金額を購入量で割ることで、100g単価を求めました。
価格を見ると、うわ高! マグロ100gって310円!? まあ冷静に考えればこんなもんか、特売日とか狙えばもうちょっと抑えられる気はしますが……。鶏肉(同様の求め方で102円/100g)と比較するととんでもない価格差です。
ですが、さすがに100g単価だけで比較するのは筋が悪い。100gあたりの単価よりも、たんぱく質をしっかり取るためにどのくらいコストがかかるかを考えたほうが健康面に配慮したコスパと言えます。
筆者は1食にたんぱく質15gくらいは主菜から摂ってほしいと思っているので、たんぱく質15gあたりの単価を比較してみました。
品名 | 100g単価 | たんぱく質 15gあり単価 |
---|---|---|
まぐろ(きはだ) | 310円 | 191円 |
さけ(しろさけ) | 244円 | 164円 |
ぶり(養殖) | 220円 | 154円 |
若鶏(若鶏むね・皮付き) | 102円 | 72円 |
というわけで、結局鶏肉のほうがとっても安いですね、当然ですが。
魚は金銭的にはコスパが悪いです。仮に鶏肉ばかり食べており魚を一切食べていない人が、1日1食分を魚(1食に70~100gくらいの切り身一切れ)に置き換えた場合、だいたい1日あたり100円くらいコストが嵩むことになります。1人頭3000円/月と考えるとそれなりに大きな数字ですよね。現代日本において、魚はちょっぴり値が張る主菜と考えて良いでしょう。
2.魚は文句なく健康に良い
じゃあ魚は食べずに鶏肉ばかり食べるのがコスパにも健康にも良いのでしょうか?
結論を言うと「魚は高いけど健康に良い」です。
67万人もの人々を対象としたコホート研究(同じ特徴を持つ人たちの集団を長期間かけて健康状態がどう変化するかを調べる研究)では、魚を60g以上(小さめの鮭の切り身くらい)食べると十分な健康面の効果が得られました。魚を全く食べない人と比べると、魚を1日60g食べた人は、死亡率が12%下がることが報告されています。また、魚に含まれる(魚に限らずナッツなどにも含まれますが)オメガ3脂肪酸は、少量でも摂るとがんのリスクを下げることも分かっています。
肉しか食べない人が、1日1回魚を食べることにした場合、健康上のメリットを受けるには十分な魚の量を食べることができます。つまり「死亡する確率が12%くらい低下する魚サブスクが3000円/月」と考えるとイメージしやすいかもしれません。
これに価格分の価値があるかは各自の判断になることでしょう。
3.魚の種類はこだわりすぎなくて良い
次にn-3系脂肪酸が豊富な青魚についてお話します。結論を言うと「種類は問わず魚を食べればいい」です。
n-3系脂肪酸といえば、有名どころだとDHAやEPAでしょう。サプリメントにもなっていますし、聞いたこともあるかと思います。先にご紹介した研究や食事摂取基準でも、病気になりにくくしてくれる効果(乳がんや冠動脈疾患)があるかもしれないと報告されています。まだ、大々的に皆様に推奨するほどの確かさではありませんが、今後に期待が持てる栄養素です。そう考えると、DHAやEPAを多く含む青魚をしっかり食べると良さそうに思えてきます。
ただ、魚をちゃんと食べる習慣があれば、n-3系脂肪酸の不足は起こりそうにありません。日常生活を自由に営んでいる健康な日本人にはn-3系脂肪酸の欠乏が原因と考えられる報告はありませんし、先の研究で推奨されている研究でもn-3系脂肪酸の摂取量は我々日本人なら余裕でクリアできる範疇です。
「魚は脂肪が少ないタラしか食べない」というような極端な選択をしない限りは、魚を食べれば100点くらいの気持ちで過ごすのがバランスの良い考え方だと思います。
普通の人が水銀のとりすぎを気にする理由は薄い
水銀が多い青魚を摂取して平気なの? と聞かれることがあります。結論を言うと「基本は食べよう」です。
まず水銀についてですが、過剰摂取が体に悪いことを否定するつもりはありません。水俣病を知っている方ならばご承知のことでしょう。環境庁のwebサイト「水俣病と水銀について」では、メチル水銀は神経系の特定部位に強い傷害を起こすことが述べられています。
そして魚には水銀が含まれています。ということは魚は危険ということですね。魚は食べないようにしましょう! ……という結論が早計なのは、皆様ならご納得いただけるでしょう。水銀は体に悪い、魚には水銀が含まれる、だからといって魚が健康に悪いと論じるのは早計です。結局何事も量をコントロールすることが大事。醤油は1L飲んだら死ぬから摂ってはいけない! とは言わないでしょう? 水銀も同じです。メリットとデメリットをしっかりと検討すべきです。ごく少量の水銀に怯えて、魚のメリットを享受しないのは、筋が悪い選択だと言えます。
もちろん1回で相当な量の水銀を摂ってしまうケースもあるんですが、それはバンドウイルカやコビレゴンドウなどの珍しい魚を食べた場合のみです。
なかなか美味そうですけど……。皆さんバンドウイルカ食べたことあります? 私はないです。これらを料理を、継続的に食べるのはレアケースと言えるでしょう。
水銀の影響を受けやすい妊産婦の方のみ注意すればよろしいでしょう。その点は厚生労働省のwebサイトに詳しいので、ご興味がある方は読んでください。
4.結論
端的にまとめると「高いけど、なるべく1日1切れくらい魚を食べようね!」ですね。
肉と比較して日持ちもしないし、サバとかは冷凍保管すると冷凍焼けおこすし、子どもにも敬遠されやすいしで、なにかと頻繁に食べるのが億劫になってしまう魚。しかし、皆様の人的資本を守る効果は確かです。ぜひ無理のない範囲で取り入れてみてください。
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