今日はまず、結論から言ってみましょう。
結論
- 動物性の油と比較してオリーブオイルは体に良い。
- このブログの読者(ある程度健康に気をつけている日本人の方)はきっとオリーブオイルを多く摂らなくていい。
いつもだったら「このくらい食べてね」という話の仕方をするのですが、今日の結論は「皆さんはそんなに摂らなくていいんじゃないかな」です。理由を解説していきましょう。
そもそも体にいいんですか?

え、じゃあオリーブオイルは体には良くないの? やめたほうがいい?
いや、そういうわけじゃないんです。ご安心ください。まず、オリーブオイルは体に良いと言うことをご説明していきます。
この手の話で最も有名な食習慣は地中海食です。本稿だけで取り上げるには広すぎるテーマなので深堀りはしませんが、さまざまな研究で健康に良いことが明らかにされています。
そしてスペインで行われた比較試験においては、地中海食にオリーブオイルを追加して摂取した人たち(1日50ml! 結構な量です)と、そうでない人たちを比較した場合、心筋梗塞・脳卒中・心血管死の合計が少なくなったと報告されました。
他にもいろいろな研究がなされていますが、私はオリーブオイルを摂取すると害があるという論文は見たことがありません。
オリーブオイルは体にはいい。そこまでは間違いないと考えていいと思います。
じゃあオリーブオイルを食べればいいじゃない?
そうと言い切れないところが、栄養の面白いところです。
地中海食の定義も研究やシーンによって変わりますが、特徴として「飽和脂肪酸と比べて一価不飽和脂肪酸をたくさん摂っている」ということが挙げられます。いろいろな研究を見てみると、飽和脂肪酸は控えたほうがベターであることは間違いなさそうです。
例えば、アメリカの食生活を例に取ると、多くの飽和脂肪酸を摂取しています。動物性脂肪や、パーム油から作られるフライなどをたくさん食べているんですね。こうした方々に対してであれば「オリーブオイル最高! 食べると健康!」と発信してもいいかなと思います。
でも上記の通り、地中海食の定義はオリーブオイルが入っているということではなく、飽和脂肪酸が少なめで一価不飽和脂肪酸が多いことです。じゃあ別にオリーブオイルではなくても、一価不飽和脂肪酸を豊富に含む植物性脂肪を摂っていればいいんじゃないでしょうか。
具体的にはどんな油が、それに当てはまるでしょうか。餅は餅屋、油は油屋ということで、日清オイリオグループの図を引用させていただきます。
日清オイリオグループ 「油に関するQ&A 油と健康のおいしい関係」 “Q. 脂肪酸は、どんな働きをしているの?” より引用
菜種油(キャノーラ油)か大豆油でもいいじゃん、といった印象です。
パーム油(アブラヤシからとれる飽和脂肪酸が多い油)で揚げ物をしていたり、バターやラードを多用していた人がオリーブオイルに切り替えるのは良いことだと思うのですが、オリーブオイルが特異的にすばらしい油というわけはありません。
日本では、明治時代頃から食用に菜種油が用いられるようになり、令和6年度の油糧生産実績調査においても最も多く輸入され食用されているのは大豆油、ついで菜種油(キャノーラ油)です。油に関しては、幸いにも健康に良い食習慣が根付いていたので、オリーブオイルを積極的に使うメリットがうすいわけです。
こうしてみると、別にオリーブオイルが奇跡の油ってわけではないことがわかります。もしも地中海でオリーブが栽培されておらず、菜種がたくさん栽培されていたら、世のオリーブオイル信仰は発生してなかったかもしれませんね。
オリーブオイルと価格について

コスパの面でも論じるために、価格差を整理してみます。
| 品名 | 価格 | 100gあたりの価格 |
|---|---|---|
| 日清オイリオ やさし~く香る エキストラバージンオリーブオイル 600g | 1,382円 | 230円 |
| 日清オイリオ さらっと軽~い オリーブオイル 600g | 1,274円 | 212円 |
| 日清オイリオ 日清キャノーラ油 (におい少ない) 900g | 376円 | 42円 |
| トップバリュベストプライス サラッとこくうまサラダ油 900g | 246円 | 27円 |
こうやって見ると、お話にならないくらい価格差がありますね。健康とコスパの総合面で考えれば絶対菜種油(キャノーラ油)でいい、ということになります。
これはいち管理栄養士の邪推ですが、昨今のオリーブオイル健康説は「菜種油は売っても儲けが小さいので高級なオリーブオイルを売りたい人たち」の思惑も大いに関わっているんじゃないかなと思っています。
なお、「サラダ油」というのはJASの等級の1つで、精製油より精製度が高く、低温下でも濁ったり固化することがないので、ドレッシングなどにも使いやすい調味油のことです。なので、理屈上ごま油で作った「サラダ油」というのも存在できます。
しかし、商売的にサラダ油というとリーズナブルなイメージがあるので、ある程度値が張るごま油などを「サラダ油」として売るケースはあまりないように思います。日本のサラダ油はだいたい大豆油と菜種油の混合と考えていいでしょう。
高くてコスパには劣るオリーブオイルですが、おいしさを味わいたいというのであれば、それは問題ないと思います。健康的に菜種油に劣るという訳ではありません。私もマリネやアクアパッツァを作るときに菜種油を使ったら、物足りなくて寂しくなってしまいました。
なお、エクストラバージンオイルは化学的処理を一切行わず、物理的方法で抽出し熱による酸化が無いオイルとされています。でも普通のオリーブオイルと比較して飽和脂肪酸がより一層少なめで一価不飽和脂肪酸がより一層多いということはありません。メリットは食味面がメインと考えるといいでしょう。
あらためて結論
- 動物性の油と比較してオリーブオイルは体に良い。でも、菜種油や大豆油も十分に良い。
- このブログの読者(ある程度健康に気をつけている日本人の方)はきっとオリーブオイルを追加で多く摂らなくていい。
- でももちろんおいしいなら食べてもいい。
というわけでオリーブオイルが体に良いのは間違いなけど、誰もが追加的にオリーブオイルを摂ればいいわけではないということですね。正しい健康情報も、正しく扱えてこそという記事でした。



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