管理栄養士として仕事をしていると聞かれることがよくあります。
「私、貧血みたいなんです。どうやって鉄分を摂ればいいですか?」
貧血は身近な病気のひとつです。鉄分をしっかり摂りたくなる気持ちはわかるのですが、鉄分たっぷりのレバーを食べれば解決する問題なのでしょうか?



この記事を読めば、貧血のような症状を感じたときにどうするべきかがわかります!
結論
- 貧血かも? と思ったら
-
- まずは内科を受診すべし
- 自己診断で鉄分を摂るべきではない
- 『鉄欠乏性貧血』と言われたら鉄剤での治療が基本
- 鉄鍋や機能性食品は治療に有用ではあるがあくまで補助
貧血っぽいと感じたら受診をしよう!
このブログを閉じて内科を受診すべし
いきなりですが、とても大事なことを言います。
「貧血かも?」と思ったら、まず病院を受診してください。こんなブログを読んでいる場合じゃありません。
血液検査のできる内科に行くと良いでしょう。
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貧血=鉄不足と決めつけるのは危険
栄養と病気は密接に関係しています。ビタミンB1不足による脚気の話は有名ですよね。
同じように、鉄分不足が原因で起こる「鉄欠乏性貧血」ももちろんあります。ただし、貧血のすべてが鉄不足が原因で起こるわけではありません。
貧血には、さまざまな原因があります。
- 鉄分の不足による鉄欠乏性貧血
- 腎機能低下による腎性貧血
- 特定のビタミンが吸収できずに起こる巨赤芽球性貧血
- 肝機能障害に伴う貧血
- 失血による急性貧血
これらを一括りにして「貧血なんだから鉄分をとればいい」と考えて良いのでしょうか? そんな事はありませんね。
鉄分の多い食品に気を配るのは、貧血の原因が鉄欠乏だと確定してからで十分です。
そもそも貧血なのかもわからない
さらに言えば、その「貧血っぽい症状」そのものが、本当に貧血によるものかどうかも分かりません。
- 立ちくらみ
- ふらつき
- だるさ
- 息切れ
これらの症状があると、貧血を疑ってしまいますよね。
たしかに貧血によってこれらの症状が引き起こされることはありますが、逆は真ではありません。立ちくらみがあるからといって、貧血とは限らないのです。
こうした症状の裏に重篤な疾患が隠れているケースもあるということです。
だからこそ「ネットにいる正体不明の管理栄養士」に助けを求める前に、必ず医師の診断を受けてください。



自己診断は、百害あって一利なしです!
鉄欠乏性貧血と診断されたら鉄剤を服薬しよう
ここからは、話を一段階進めましょう。医師から「鉄欠乏性貧血です」と診断された場合の話です。
この場合、鉄分を補うことで症状が改善する可能性があります。ただし食品だけで治療しようとするのは、正直かなり無理があります。
食品よりも薬で治療しよう
鉄欠乏性貧血の場合、多くは鉄剤による治療が始まります。有名なのがフェロミア錠ですね。
フェロミア錠には1錠あたり50mgの鉄が含まれており、症状にもよりますが1日2~4錠程度処方されることが多いです。少なく見積もっても鉄100mg分ですね。
では、これを食品で補う場合は、どのくらい食べればよいでしょうか?
| 食品 | エネルギー(kcal) | 鉄(mg) | 必要量(g) |
|---|---|---|---|
| 納豆 | 5,575 | 100 | 3,030 |
| 小松菜(葉・生) | 464 | 100 | 3,571 |
| ひじき(乾燥・鉄釜・ゆで) | 481 | 100 | 3,703 |
| 豚レバー(生) | 877 | 100 | 769 |



ヤギの餌かな?
私の好きな食材ばかりですが、さすがに1日に納豆75パック、小松菜3kgは食えません……。
さらに、毎日これを続けると、鉄より先に他の栄養素の過剰摂取が問題になります。
例えば豚レバーを769g食べたら、ビタミンAの耐容上限量の30倍以上を摂取することになります。毎日食べていたら命すら危ういかもしれません。
まとめると食品だけで鉄欠乏性貧血を治療するのは難しいのです。鉄欠乏性貧血の方は、食品よりもまずはしっかり服薬治療を行いましょう。
食事の役割は、予防や、治療後の再発防止です。
- 鉄剤でしっかり治療
- 数値が改善した後再発予防として鉄を意識した食事をする
この順番が現実的です。小松菜やレバーなどの鉄を含む食品は、治療の主役ではなく、サポート役と考えてください。
鉄鍋の効果は限定的
ひじきは「鉄分が多い食品」として有名です。しかし、最近ひじきの鉄分量は昔より少なくなっているというのはご存知でしょうか。
理由のひとつは、製造工程で使われる道具の多くが、鉄鍋からステンレスに変わったことです。
鉄鍋で煮たひじきには、鍋の鉄分が吸収されていたのですね。
南部鉄器販売サイトOIGENより引用 クックトップ 丸深形 24cm
このように、鉄の調理器具を使うことは、鉄の補給に一定の効果があります。鉄鍋を使ったり、鉄のインゴットを入れて調理したりすると、鉄欠乏性貧血を防げるという報告は多数存在します1。
日本では岩手の南部鉄器なんかが有名でしょうか。



鉄製の調理器具は手入れが面倒ですが、見ただけでテンションが上りますね! かっこいい!
ただし、それが日本人の鉄欠乏性貧血治療として有効かと言われると疑問が残ります。
先程紹介した系統的レビューの中でも、貧血の数値(ヘモグロビン値)が改善した研究は半数以下で、それ以外は上昇してもわずかな量でした。
特に、最も大きな効果が得られたのは元々鉄欠乏性貧血の有病率が5割を超えるエチオピアでの研究です。現代日本と比べて、極めて鉄の摂取量が少ない環境のデータです。
環境が日本と大きく異なっています。鉄鍋を使えば貧血予防になる、というのは過大評価だと言えるでしょう。
鉄欠乏性貧血の治療の基本はあくまで「鉄含量の多い食品+必要に応じて鉄剤」です。鉄鍋はそれを補完する手段、という整理が無難です。
鉄分強化食品・機能性食品も鉄剤にはかなわない
鉄分を強化した栄養機能食品もあります。これらはどうでしょうか?
雪印メグミルクwebサイトより引用 プルーンFe 1日分の鉄分 のむヨーグルト
これらは「日常的に鉄が不足しがちな人が、底上げとして使う」という意味では悪くありません。
ただし、含まれる鉄の量は鉄剤の5分の1〜10分の1程度です。不足しないように食べるのはアリですが、すでに鉄欠乏性貧血を起こしている人が飲むには力不足と言えるでしょう。
サプリメント型の鉄剤も販売されていますが、管理栄養士としてはあんまり好きになれません。
前述の通り、貧血っぽいと思ったらまずは病院を受診するべきなのです。それなのに「貧血だから鉄サプリ飲んでます」って方が多くて……。



鉄サプリメントはあくまで専門家の助言に従って飲んでください。自己診断で飲むことは勧めません!
まとめ
まず診断 それから栄養の話をしよう
- 貧血かも? と思ったら
-
- まずは内科を受診すべし
- 自己診断で鉄分を摂るべきではない
- 『鉄欠乏性貧血』と言われたら鉄剤での治療が基本
- 鉄鍋や機能性食品は治療に有用ではあるがあくまで補助
栄養に関心を持ってくださることは、管理栄養士として喜ばしいです。しかし、その関心が高まるあまり「何でも栄養や食品で解決できる」と思い込んでしまう方がいらっしゃいます。
鉄分も、他の栄養素も、疾患を治すことを約束してくれる訳ではありません。まずは受診してください!
鉄分の多い食品を食べるのは、きちんと受診・鉄剤の服用を始めてからで十分間に合います。
鉄分が多い食品情報については、私が改めて解説するまでもなく「鉄分 食品」と検索すれば、数多く見つかります。そちらを参考に、治療と並行して食事の見直しを進めていただければ幸いです。
参考文献
1)Sharma, S., Khandelwal, R., Yadav, K., Ramaswamy, G., & Vohra, K. (2021). Effect of cooking food in iron-containing cookware on increase in blood hemoglobin level and iron content of the food: A systematic review. Nepal Journal of Epidemiology, 11(2), 994–1005.






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