
ヨシあすけん、てめえ喧嘩売ってんのかーッ!?
食事記録アプリ「あすけん」に32点をつけられた管理栄養士のヨシです。
私この仕事で10年以上飯食ってるんですけど! その私に対してAIが偉そうに……! 絶対に許さない!
ですが、あすけんをはじめとする食事記録アプリは、昨今の栄養界隈を大きく変えた存在でもあります。
私が大学生だった20年前は手書きの食事記録が一般的でした。そもそも記録を取るということ自体が難しかったのです。その頃と比べると、非常に良い環境になりました。
今回は、専門家から見た食事記録アプリの特徴について述べます。この記事を読むと、あすけんがどのくらい信用できて、どうやって使っていけばいいのかがわかります!
結論
- 食事記録をとることは栄養管理をするうえで大事。
- 栄養管理アプリ(あすけん)は妥当性や精度が保証されていない。
- 目標となる数値の根拠は薄いものもある。必ずしも、あすけんが定める目標の量に固執する必要はない。
- 1日ごとに評価する意義が薄い栄養素も多い。必ずしも、1日単位であすけんが定める目標の量に固執する必要はない。
- あすけんには続けるための工夫がたくさん詰まっている。
- 課題はあれど、栄養管理アプリ(あすけん)は食事管理を継続する上では実用的なツールである。
食事記録をとることは栄養管理をするうえで大切
前提として、食事記録をとることは、健康管理を考えるうえでとても大切な行動です。
私たちは普段、自分が何をどれくらい食べているのかを正確には覚えていません。バランスよく食べているつもりでも、記録してみると意外な欠点に気がつくことがあります。
実際、食事内容を記録すること自体が、行動を見直すきっかけになることが報告されています。体重管理を目的とした研究では、食事の自己記録を行っている人ほど、行動変容が起こりやすいという結果が示されています1。



記録することで「何を食べるか」を意識するのかもしれませんね。
食事記録は、健康づくりを始めるための第一歩と言えるでしょう。
普通の食事記録法と比較するとアプリは不正確かもしれない
記録が大事なのはご説明しました。正確な食事内容を記録するには、どんな方法があるでしょうか?
適切な食事記録法には手間がかかる
まず『食事記録法』についてお話いたします。
この方法はその名の通り、食事した食物を事細かに記録し、それらの栄養量を計算していく方法です。ご飯を225g食べて、目玉焼きは51g……といったように、食品を秤量して記録する方法です。
具体例を見てみましょう。


| 食品名 | 重量(g) | 備考 |
|---|---|---|
| ごはん(白米・玄米半々) | 161 | 茶碗小盛1杯 |
| 豚肉 | 101 | 調理前の重量 |
| 玉ねぎ(炒め) | 140 | 調理前の重量 |
| キャベツ(千切り・生) | 42 | |
| ブロッコリー(茹で) | 60 | 調理前の重量 |
| にんにく | 1 | ごく少量 |
| インスタント味噌汁 | 150 |
こんな感じですね。説明不要、とにかく食べたものを正確に量って記録する方式です。
何をどれだけ食べたのかを調べるには『食事記録法』が最も正確です。
これが最も優れた方法なのですから、みんなこれをやるべきです。さあみんなもノートとはかりを買ってこよう!
- 面倒くさくないの?
-
めちゃめちゃ面倒くさいです。
コレめっちゃ面倒くさいんですよ!
しょうが焼きの例でも「豚肉の重さは348gで、しょうが焼きの全体のできあがり量が680g。この皿に盛り付けたのが197gだから按分法を使って……。(197÷680)×348=101gだ!」という計算してますからね。台所は進研ゼミじゃないんだよ。
毎日こういう記録を取るのは無理そうです。
さらに食べて記録する人も大変なんですが、その結果を精査する人も大変です。学生の頃同級生と一緒に、数十人が書いた食事記録を分析するバイトをしたんですが、地獄でした。
チョコのお菓子2個って書いてある……。



ルマンドなのかアルフォートなのか書いておいてヨォ!!
数ヶ月夜中まで働く羽目になりました。もうアレはやりたくない……。
というわけで、食事記録法は最も正確ですが、極めて手間がかかり、すべての方がこの方法をとるのは不可能です。
あすけんの妥当性には課題がある
食事記録法が良いのはわかりました。でも普段の生活で取り入れるのは難しそう。なにか簡単な方法はないのでしょうか?
ここで大事なのが妥当性です。
例えば、簡単に記入できる『えいよう研究所式食物チェックシート』を作ったとします。中を見ると、食物の摂取量と頻度が聞かれており、コレに答えると食習慣がわかりそうな気もします。
しかし『えいよう研究所式食物チェックシート』で出てきた答えは、果たして本当に正しい妥当な結果なのでしょうか?
実際にはご飯を100gしか食べていないのに、『えいよう研究所式食物チェックシート』の結果では「あなたはご飯を200g食べている!」という結果が出てしまうのでは都合が悪いのです。
こういうときには、その方法の妥当性を研究する必要があります。


まず、先にご説明した『食事記録法』で食事記録をして、得られた結果をとりあえずの正解と定めます。その結果と『えいよう研究所式食物チェックシート』の結果が十分に近ければ、妥当な調査方法と言えるでしょう。
昨今は食事記録アプリは栄養業界でも大変に注目されており、あすけんについても妥当性の研究がなされています。
それによると、エネルギー、たんぱく質、脂質については比較的妥当な結果でしたが、炭水化物量においては妥当性が十分ではなさそうと報告されていました2。



研究方法や研究規模に課題はあるものの、一定の評価はできる内容です。
こうした研究結果を踏まえてみると、ある程度使えそうなんですが、問題が一つ。このアプリ、どんどん進化してしまっているんですよね。
あすけんをはじめとするアプリの多くは、ユーザーによる食品の栄養量登録を呼びかけています。ユーザーに食品のデータを登録してもらって、それをユーザー間で共有してもらう仕組みです。
あすけんの商品情報入力画面
これによって利便性は増しますが、妥当性がどのように変わるのかは予測が付きません。
正確に食品の栄養量を登録する人が多くて、みんなの精度が上がるかもしれません。一方で、いい加減な入力をする人が多くて、精度が下がってしまうかもしれません。
更に、AIも日々進化しています。
あすけん公式Xアカウントより引用 AI栄養士の未来(みき)さん
昨今のAIの進歩は目覚ましく、1年も経てば大きく情勢が変わります。
イメージキャラクターの未来(みき)さんはAIですが、2024年に研究が行われた時とは別物になっているでしょう。
AIとしての精度は上がっているでしょうが、食事記録の妥当性や、それに対する評価の精度が上がっているかは別問題です。
日々進化している「今日の」あすけんの妥当性を担保するのは大変難しいのです。



あすけんがつけてくる点数も、どこまで妥当か保証されてはいないのです。
えいよう研究所の情報発信におきましては、未来さんに32点をつけられたことを全く一切ちっとも考慮せず冷静で知的で客観的な意見を述べております! 怒ってないもん!
あすけんの良くないところ
妥当性は大掛かりな研究をしないとわからないことです、個人で解決することはできません。ここの不確かさについては諦めましょう。
しかし、今の段階で「明らかにあすけんの数値設定が不適切」と判断できる部分もあります。
あすけんを使う際には、その場合は下記の問題を内包していることを把握しておくと、より適切に食事管理ができると思います。
「たんぱく質多め」の目標量が不適切
あすけんでは目標となるたんぱく質の量を選べるのですが、その中で「たんぱく質多め」を選んだ場合のたんぱく質量が基準を逸脱しています。
厚生労働省が定めるたんぱく質摂取量のおすすめは13~20%
栄養量の必要量の求め方は様々ですが、日本人にとって最も信頼性の高い基準は最新版の食事摂取基準です。
そんな食事摂取基準の中に、エネルギー産生栄養素バランスに関する記述があります。
ざっくり解説すると「病気を防ぐため、エネルギーの何%をたんぱく質で摂るべきかを定められている」のですね
たんぱく質のエネルギー産生栄養素バランスは13~20%が適正とされています。



余談ですが、令和5年度国民健康栄養調査によると、日本人のたんぱく質摂取量の平均はおよそ15%です。
たんぱく質摂取量が少なすぎると、体を維持できずに筋肉が衰えたり、フレイル・サルコペニアになりやすかったりします。逆に多すぎると2型糖尿病になりやすくなる可能性が示されていたり3、理論上は腎機能への影響があったりします。
何事も過ぎたるは及ばざるが如しです。そのため、たんぱく質のおすすめの範囲が決められているわけです。
あすけん「たんぱく質多め」28%はちょっと非合理的
しかし、あすけんで「あす筋ボディメイクコース」「たんぱく質多め」を選択すると、たんぱく質のエネルギー産生栄養素バランス28%という数値を提案されてしまいます。
あすけんのたんぱく質設定画面
私の場合ですと、たんぱく質166gの摂取が提案されました。
大戸屋の鶏と野菜の黒酢あん定食(おかず増量)を1日3食食べて、1日3本ミルクプロテイン 脂肪 0 ココア風味 200mlを飲んでもまだ156gで届きません。私の価値観では、これは異常な数値です。


ボディービルダーや激しいスポーツをしている人の場合は、健康以外の目的(例:筋肥大、運動能力の向上)のために極端な高たんぱく質な食事を摂取することもあります。
しかし専門家がこまめに経過を観察できる状況下であればともかく、アプリの前の人間にたんぱく質28%を勧めるのは慎重さに欠けます。



毎日たんぱく質160gを摂取するのは、お金もかかりますしね……。
もちろんちょうどよい目標値も選択することはできます。「あす筋ボディメイクコース」「あすけん推奨値」コースであれば、目標は20%であり、食事摂取基準の目標量の上限と同じになっています。
これであれば「不足なくしっかり食べよう」と思っている一般的なユーザーにも勧めやすい数字ですので、現在利用中の方は「あすけん推奨値」コースを選択することをおすすめいたします。
1日単位で管理するのが難しい栄養素にも文句言われる
日間変動という単語をご存知でしょうか?
人間は毎日同じ食事を食べるわけではありませんので、昨日食べたエネルギーと今日食べたエネルギーは異なります。この差を日間変動と言います。
エネルギーや特定の栄養素において、この差が大きくなりやすい場合は「日間変動が大きい栄養素だ」と表現します。
エネルギーは比較的日間変動が少なく、概ね3~4日くらい調査して平均すれば、±10%以下の誤差に落ち着くと言われています。こうした栄養素は、日毎に評価していくことにも一定の意義があります。



「3日間の食事記録を見てエネルギー摂り過ぎの人は、100日間で見ても多分摂りすぎ」と言えるでしょう。
一方で、日間変動が大きい栄養素もあります。
その代表格がビタミンA(βカロテン)です。30~49歳の方を対象としてビタミンAの摂取量が±10%以下の誤差に落ち着くためには男性で61日、女性で68日もかかると言われています。
ビタミンAは本当にばらつきます。盛りの良いレバニラ定食食っただけで、推奨量の10倍近く摂ってしまうことになるんです。
ブレること自体は栄養素の特徴なので良いのですが、問題はあすけん側が1日単位でセンセーショナルに不足・適正・過剰をアピールしてくることです。


レバニラ1皿で簡単に異常値を叩いてしまう栄養素を、毎日毎日適正な範囲に納める努力をすることが、どれだけ健康に寄与するというのでしょう? それらであすけん点数が上下することが適切と言えるのでしょうか?(点数計算式は非公開なので、もしかすると点数に寄与していないかもしれませんが)
少なくとも、ビタミンなど比較的日間変動の多い栄養素に関しては1日単位で一喜一憂する必要性は薄いです。
それらの栄養素は、ある程度まとまった期間(1週間から1ヶ月程度)で評価して、長い目で見て過剰・不足がないかを確認するのが良い利用方法でしょう。
それでもあすけんを使った方が良い理由
現状、問題があることはご理解いただけたと思います。では、あすけんは使わないほうがいいのか?



私見ですが、とってもオススメします。
理由を2つ解説します。
実行可能な手段の中では一番妥当性が高そう
食事記録をとるなら、信頼性や妥当性が高い優れた方法が良いに決まっています。
しかし、妥当性が十分に高い方法は「自宅で食事記録を取ろうと思い立った人」、つまりブログの前のあなたには届きません。あまりにも普及していないんです。
食事記録法、24時間思い出し法、隠膳法、FFQーー。これらはきちんとした食事記録の方法ですが、専門家や専門機関の協力なくして実行することはできないのです。
少なくとも「クリスマス食べ過ぎちゃったから、食事記録しようかな?」と思っているあなたが実施するにはハードルが高すぎます。



そうなると、手に取れるものの中で最も有効そうな「あすけん」を選ぶのは自然なことかと思います。
専門家の私でさえ、前述したような問題点があることを踏まえた上でも、この便利なツールを使いたいと感じます。ご家庭で使う道具としては、「あすけん」は十分上等だと考えてよいでしょう。
続けやすいようにご褒美をくれる
このアプリの最大の強みは「栄養記録を継続させる能力」であると思います。
栄養は1日だけ完璧に整えても、ほぼ健康上のメリットはありません。栄養素ではなく食品を、食品ではなく食事を、食事ではなく食習慣を管理することが望まれます。
そのためには1日だけではなく長期間にわたって食事を管理する必要がありますが、これを続けられる人はほとんどいません。面倒なことは続かないのです。
行動を継続させるためには様々な方法がありますが、あすけんは2つのご褒美で継続をサポートしてくれます。
(精度は不十分かもしれないが)点数をつけてくれる
食事にはわかっていないことがあり、今の栄養学では食事に妥当な点数をつけることなどほぼできません。
しかし、あえて正確さを犠牲にしてでも、わかりやすい数字を与えてくれるのは、あすけんの特長の一つだと思います。
栄養アプリにおけるゲーム要素(目標・進捗バー・ポイントなど)は、ユーザーの満足度・継続使用・健康行動の変容につながる可能性があることを示した研究もあります4。



数字が大きいと気持ちいいですからね!
私を含め人類は単純なので、点数が増えたり、目標を達成したと感じるだけで嬉しいんですよね。
40点よりも80点のほうが倍健康であるわけは決してないのですが、ゲーム感覚で点数を追い求めに行くのは一つの付き合い方でしょう。
フィードバックをくれる
人は一人では行動を変えられません。
例えば、あなたがなかなか寝る前のおやつをやめられなかったとしても、私が腕組みしながら怖い顔してあなたの背後に四六時中立っていたら、おやつを食べる回数は減りそうですよね?
周囲からの注目は行動を大きく左右するのです。
しかし、残念ながら見張るための人員はいつも不足しています。専属の栄養士はそこら辺に転がっているわけではないのです。



見張ってくれるのは人間でなくても我慢しましょう。
君も未来さんにに見守られながら食事を管理しよう!
まとめ
欠点を理解したうえであすけんを上手に使おう
- 食事記録をとることは栄養管理をするうえで大事。
- 栄養管理アプリ(あすけん)は妥当性や精度が保証されていない。
- 目標となる数値の根拠は薄いものもある。必ずしも、あすけんが定める目標の量に固執する必要はない。
- 1日ごとに評価する意義が薄い栄養素も多い。必ずしも、1日単位であすけんが定める目標の量に固執する必要はない。
- あすけんには続けるための工夫がたくさん詰まっている。
- 課題はあれど、栄養管理アプリ(あすけん)は食事管理を継続する上では実用的なツールである。
あすけんとの付き合い方についてお話させていただきました。
あすけんの数値や点数は、科学的に完全な評価ではありません。しかし、食事を「意識する行動」を引き出すという点においては、非常に実用的なツールであることも確かです。
32点という評価に惑わされる必要はないのです。必要なのは、点数ではなく、食習慣を少しずつ調整していく姿勢なのですから。



以上、32点管理栄養士がお届けしました! よいあすけんライフを!
参考文献
1)Burke LE, Wang J, Sevick MA.Self-monitoring in weight loss: a systematic review of the literature.J Am Diet Assoc. 2011;111(1):92–102.
2)濵埜 美羽, 鈴木 誠, 岩崎 優, 重村 泰毅, 趙 吉春, 山本 淳一.食事管理アプリケーションによる栄養素推定の妥当性. 行動リハビリテーション 2024;12:12–15.
3)Schulze MB, Haardt J, Amini AMA, Kalotai N, Lehmann A, Schmidt A, Buyken AE, Egert S, Ellinger S, Kroke A, et al. Protein intake and type 2 diabetes mellitus: an umbrella review of systematic reviews for the evidence-based guideline for protein intake of the German Nutrition Society. Eur J Nutr. 2024;63(1):33-50. doi:10.1007/s00394-023-03234-5.
4)Berger M, Jung C. Gamification preferences in nutrition apps: Toward healthier diets and food choices. Digit Health. 2024 Jun 11;10:20552076241260482. doi: 10.1177/20552076241260482. PMID: 38868367; PMCID: PMC11168059.













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