すっかり寒くなってきましたね。 寒くなると「水分を取ろう」という気持ちが起きにくくなります。
そんな中で、ひっそりと進行するのが「かくれ脱水」です。 今回は、人体と水分の関係、そして冬場の脱水をどう防ぐかについてお話しします。
ヨシこの記事を読めば、冬に限らず脱水を防ぐための考え方が掴めます!
当たり前だけど水分は大事
水分の役割
当然ですが、水分は人体にとって重要です。
水分は、化学反応の場になったり、体温調節を担ったりしています。体の恒常性を保つうえで欠かせない存在です。
これらが失われれば、当然人体にとって悪影響が出ます。



不足しないように補っていかなければなりません。
人体に含まれる水分の量について
水分は、人体の約60〜70%を占めています。 この割合は、体格・筋肉量などによって変わります。
私の場合、体組成計ではかってみると、体重60kgのうち約38kgが水分でした。
厚生労働省webサイト 健康のため水を飲もう講座より引用
この水分を体重の5%失うと喉の渇きを感じて脱水症状を起こし、10%以上失うとより深刻な症状が出ることがあります。
毎日脱水症状を起こすわけにはいきませんね。
5%も水分を失う前に、補給することが望まれます。
1日に飲むべき水分量は『1,500ml』
補給するべき水分について簡単にまとめます。
- 1日2,500ml程度の水分が失われる
- 食事から1,000ml程度の水分が摂取できる
- 水分の過剰摂取を怖がる必要は薄い(不足に気をつける方が大事)
- 提案
-
(出ていく2,500mlのうち1,000mlは食事から摂れるので)1日あたり1,500mlの水分を飲みましょう。
1日に失われる水分は2,500ml程度だが個人差が大きい
水分の必要量を考えるには「どれくらい体から出ていくか」を考える必要があります。今回は厚生労働省が水分摂取を呼びかけている資料を見てみましょう。
まず尿や便として1,600ml程度の水分は排泄されます。
次に、汗や呼気などによって失われる不感蒸泄です。研究によって差が大きいですが1日900ml失われるとしています。
合計2,500mlの水分が体から出ていくわけですね。結構な量です。



私の体格だと、1日水分補給しなかったら脱水症状を引き起こしてしまいます。
しかし、これらを細かく計算することの価値は実生活ではほぼありません。
ちょっと利尿剤を使えば尿量が3,000ml程度出る人も珍しくありませんし、脱水気味の人はそもそも尿量が少なくなります。不感蒸泄量も、気温や運動量によって大きく左右されます。
水分の喪失量は、個人差が極めて大きいのです。
今日の目的は、正確な水分消費量を求めることではなく、かくれ脱水を防ぐことです。とりあえず「2,500mlくらい失われるんだからそれ以上には補おう」と判断できれば、実用上は十分と言えます。
食事からも1,000mlくらい水分が摂れる
水分というと飲み物がイメージされますが、食事にも水分が含まれます。野菜や果物、肉や炊いたお込めの中には水分が入っていますよね。
厚生労働省の資料によると、1日の食事から1,000mlくらいの水分を摂ることになるそうです。
私の経験則でも、施設や病院の一般的な食事について計算してみると、 1日あたり1000〜1300ml程度の水分量になることが多いです。
食事から摂る水分も、決して馬鹿にできない要素だと言えるでしょう。



そのため、食事量が落ちている高齢者では注意が必要です。
高齢になると、食欲低下や咀嚼・嚥下機能の低下などにより、 食事量そのものが減りやすくなります。
その結果、エネルギーやたんぱく質だけでなく、 食事から自然に摂れていた水分量も同時に減少します。
食事摂取基準2025年度版で年代別に水分摂取量を比較した表では、70歳以上になるとがっくりと摂取量が減っているのがわかります。
食事量が落ちている高齢者や、食欲がない方ほど、 意識的な水分補給を心がける必要があります。
水分は摂りすぎると害があるが可能性は低め
「水中毒」という言葉があるくらいなので、水の飲み過ぎで体に害を及ぼす可能性は0ではありません。
過剰飲水による低ナトリウムの特徴をまとめた研究では、中央値8 L/日または4時間で5.3 Lの摂取で水中毒を来していたと報告しています1。
これらの過剰飲水の半数以上が心因性のものです。そうした特殊な状況でない限りは、基本的に水分の取りすぎが問題になることはほぼありません。



実生活において、水分過剰摂取の可能性は低いので、不足にだけ気をつけていればOKと考えて良いでしょう。
心臓病や腎臓病を患っており、水分制限が指示されている場合はこの限りではありません。
どんな飲み物がおすすめ?
基本的には、水やお茶でまったく問題ありません。
経口補水液は緊急時以外は飲む必要なし
経口補水液は、電解質(ナトリウムやカリウム)やブドウ糖の濃度を調整した製品です。
大塚製薬webサイトより引用 経口補水液OS-1
すでに脱水が起きていて、急いで補給する必要がある場面では有用です。
ただし、冬場の「隠れ脱水」を防ぐために、 日常的に経口補水液を飲む必要性は高くありません。
消費者庁も「経口補水液は、普段の生活やスポーツ時に飲むべきではない」としています。詳細は消費者庁が動画にまとめているので、そちらを参照してみてください。



単純に、お茶やスポーツドリンクの倍くらいの値段しますしね。普段使いするもんではありません。
コーヒーでの水分補給も3杯くらいならOK
コーヒーには利尿作用があるから水分補給に向かないーー。 そう聞いたことがある方も多いかもしれません。
ですが、3杯くらいならばコーヒーでの水分補給も悪くありません。
コーヒーの利尿作用はカフェインによるものです。飲む分より出す分が多くなってしまっては、水分補給にはなりません。
カフェインと尿量の研究では、カフェイン摂取量の中央値は300 mg(コーヒー3~4杯分)で、尿量が平均109ml程度増えたと報告されています2。



ほとんどのケースで、水分は差し引きプラスになりそうです。
ただし、1日の水分をすべてコーヒーで賄うのはおすすめしません。
たとえば、コーヒーを6杯以上飲んだ場合、 水分は確保できていたとしても、 カフェインの摂取量が過剰になる可能性が高くなります。
コーヒーはあくまで嗜好飲料の範囲にとどめ、水分補給は水やお茶を中心にする方が無難でしょう。
アルコールはデメリットのほうが多い
アルコールについては、水分補給という観点では メリットよりデメリットの方が大きいと考えます。
脱水を防ぐ目的でアルコールを選ぶのは、 あまり筋が良い選択とは言えません。
水分補給は「仕組み化」しよう
1日に1,500ml程度、水やお茶を飲むべきなのはわかりました。では、どのように飲んだら良いのでしょうか?
のどが渇いたら飲むのではなく、仕組み化して飲むようにすることをオススメします。
脱水のサインにはどうせ気付けない
家で気付ける脱水のサインとしては以下が挙げられます。
- 喉の渇き
- 尿量や尿の色
- 皮膚の乾燥
医療の現場では、皮膚をつまんで戻り具合を見る 「ツルゴール反応」を確認することもあります。
株式会社ニュートリー キーワードでわかる臨床栄養より引用 ツルゴール反応
このように、皮膚のシワが戻らなければ脱水の可能性ありです。みなさんもこまめにツルゴール反応をチェックしましょう!



え、何ですかこれ。毎日、自分の手をつねって確認しろってこと?
これさ、家でやる脱水チェックとしてはハードル高すぎるよ!
特に注意が必要だとされる高齢の方の場合、以下の要素も脱水チェックを妨げます。
- 喉の渇きは本人が自覚しにくい
- 尿の量や色を毎回誰かが確認するのは現実的ではない
- そもそも手に元々シワがあるのでそれがツルゴールなのか年齢によるものなのか分からない
無理! そもそもわからないから「かくれ脱水」なんでしょうが!
だからこそ「気付いて対応する」のではなく、別の考え方で脱水を防ぐ必要があるのです。
水分補給は「仕組み」で行う
そこで重要になるのが、 脱水のサインを探すのではなく仕組みで防ぐという考え方です。
どうせ脱水は見抜けません。ならば、見抜こうとするのをやめてしまうのが一つの解決策です。
多少摂取量は多くなりますが、前述の通り多少水分を摂りすぎても問題はありませんからね。
例えば以下のような方法が考えられます。
- 容器固定法
-
目標となる量を水筒やペットボトルに入れておき1日で飲み切るようにする(残量がわかるとなお良い)
- 習慣レバレッジ法
-
すでに習慣になっている行動を1つ選ぶ。その習慣の直前(あるいは直後)に水分補給を行うと定める。
例:食事、歯磨き、服薬、入浴など、毎日行っている行動の前後に1杯の水を飲む
このように、のどが乾く前に自動的に飲んでしまう環境を作ることがとても大切です。
まとめ
脱水には気づきにくいから自動的に1,500mlくらい飲むようにしよう
- 1日に2,500mlの水分が失われる。
- 1日に1,500mlの水分を飲むべき。食が細い人はもっと飲むべき。
- 水分補給は水やお茶で良い。
- 脱水のサインに気づくのは難しい。
- 飲む仕組みを作ろう。
水分は、誰にとっても必要な普遍的な栄養素です。
だからこそ頑張るのではなく、 最低限の手間で補給できるよう、日常生活の中に対策を組み込んでいきたいところですね。



楽して脱水を防いでいきましょう!
参考文献
1)Rangan, G. K., Dorani, N., Zhang, M. M., Abu-Zarour, L., Lau, H. C., Munt, A., Chandra, A. N., Saravanabavan, S., Rangan, A., Zhang, J. Q. J., Howell, M., & Wong, A. T. Y. (2021). Clinical characteristics and outcomes of hyponatraemia associated with oral water intake in adults: A systematic review. BMJ Open, 11(12), e046539.
2)Zhang Y, Coca A, Casa DJ, Antonio J, Green JM, Bishop PA. Caffeine and diuresis during rest and exercise: A meta-analysis. J Sci Med Sport. 2015;18(5):569–574. doi:10.1016/j.jsams.2014.07.017












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